学術講演会演題賞(学術部会賞)選考講演会 学術講演会演題賞(学術部会賞)選考講演会
- AS1 移植肺胞上皮細胞の動態解析による肺傷害後肺胞再構築様式の検討
- 長谷川浩一,佐藤篤靖,佐藤 晋,上桝 潔,濱川瑶子,室 繁郎 京都大学呼吸器内科学
【背景】急性肺傷害からの修復過程において,2型肺胞上皮細胞(AT2)は組織幹細胞として増殖・分化することで肺胞恒常性を維持する.肺胞再構築過程におけるAT2の詳細な動態と再生への寄与度は不明である.【目的】急性肺傷害後のAT2による肺胞再構築様式を明らかにする.【方法】ブレオマイシン(BLM)モデルとAT2特異的GFP発現マウスを用い,傷害後のAT2の増殖・傷害・分化を定量的フローサイトメトリーと組織解析により検討した.次にGFPマウス肺から純単離したAT2を急性炎症晩期(day10)に経気道移植し,定着細胞の固有動態を慢性期(day100)まで継時的に評価した.再構築組織のマッピング,肺機能測定,線維化定量,mRNA発現解析を行った.【結果】BLM傷害後,AT2はday7に最も増殖したが(Ki-67+AT2;9.4±1.3%),総AT2数は継時的に低下しday10には54.7±9.9%となった.移植AT2は急性線維化期(day21)に線維化部位の近傍で増殖・分化を伴い生着した.慢性期(day100)では移植細胞は肺胞構造を再構築し,肺機能と線維化の程度は非移植群と比較し有意に改善した.【結語】移植細胞による肺胞再構築と線維化抑制から,肺傷害後急性期の再生環境の存在が示唆された.
日本呼吸器学会誌 第6巻増刊号 p.115(2017)