学術部会賞 学術講演会演題賞(学術部会賞)選考講演会
- AS12 シスプラチン投与時のshort hydrationの意義:胸部悪性腫瘍患者467例での検討
- 田中 緑,堀之内秀仁,後藤 悌,神田慎太郎,藤原 豊,軒原 浩,山本 昇,大江裕一郎 国立がん研究センター中央病院
【背景】シスプラチン(CDDP)の投与法としてshort hydration(SH)法と従来の輸液法を467人という十分な症例数で比較した研究報告はなく,今回検討した.【方法】2009年から2013年の間に,アプレピタント,パロノセトロン,デキサメタゾンによる制吐療法を用いてCDDP投与を受けた,70歳未満の胸部悪性腫瘍患者467人を対象とした.【結果】SH法/従来法で,人数:111/356人,年齢中央値:63/61歳,CDDP減量:6.3/12.9%,腎毒性中止:0.9/2.2%,治療終了後Grade1以上のCr上昇:14.4/33.1%,治療終了後のeGFR中央値:73.7/65.3 mL/min/1.73m2であった.SH法の平均在院日数は9.4日で従来法13.8日に比べ有意に短かった.治療後のG1以上のCr上昇に関わる因子として性別,年齢,PS,放射線治療併用の有無,Mg補充の有無,治療前Cr上昇G1以上,投与法を多変量解析したところ,SH法で有意にCr上昇が少なかった(リスク比0.20, p=0.006).【結論】Short hydration法は腎毒性の出現頻度を低下させる.
日本呼吸器学会誌 第5巻増刊号 p.138(2016)