学術部会賞 学術講演会演題賞(学術部会賞)選考講演会
- AS10 インフルエンザ肺炎で誘導される気道上皮前駆細胞のOX40Lによるインフルエンザ肺炎の増悪作用
- 平野泰三1),菊地利明2),東出直樹1),杉浦久敏1),一ノ瀬正和1) 東北大学呼吸器内科学分野1),新潟大学呼吸器感染症内科学分野2)
背景 今回われわれは,共刺激分子OX40Lがインフルエンザの感染病態に関与しているかを検討した.方法・結果 野生型マウスにインフルエンザウイルスを感染させ,その感染性をウイル由来のNP mRNA発現で調べたところ,OX40L陽性細胞は陰性細胞に比較して5倍のNP mRNA発現を示した.次にフローサイトメーターを用いて細気管支前駆細胞を調べたところ,OX40L陽性細胞の25%が細気管支前駆細胞の表面形質を示していた.そして野生型マウスとOX40L 欠損マウスにインフルエンザを感染させ細気管支前駆細胞内のNP mRNA発現を調べたところ,OX40L欠損マウスの前駆細胞に比し,野生型の前駆細胞では4倍のNP mRNA発現を示した.さらにインフルエンザ感染マウスに,抗OX40L中和抗体を経気道的に投与したところ,生存率は有意に改善した(P <0.05).考察 インフルエンザ感染時,OX40Lを介して細気管支前駆細胞が感染標的になっていると考えられた.インフルエンザウイルスとOX40Lとの会合を阻害することが,インフルエンザ肺炎の新規治療戦略となることが示唆された.
日本呼吸器学会誌 第5巻増刊号 p.138(2016)