学術部会賞 学術講演会演題賞(学術部会賞)選考講演会
- AS8 自己免疫性肺胞蛋白症における抗GM-CSF/HLA class II複合体抗体の意義
- 濱野芳匡1),木田 博1),末永忠広2),井上義一3),荒瀬 尚2),熊ノ郷淳1) 大阪大学呼吸器・免疫アレルギー内科学1),大阪大学免疫学フロンティアセンター免疫化学2),独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター3)
自己免疫性肺胞蛋白症(aPAP)の病因は抗GM-CSF抗体による肺胞マクロファージの成熟阻害であるが,ELISA法で測定した血清抗GM-CSF抗体価は疾患重症度と相関しない.我々は近年,細胞内misfold蛋白がHLA class IIにより細胞表面へ輸送され,自己免疫疾患の自己抗体標的となる事を明らかにした.本研究では,同機序で提示されたGM-CSF/HLA class II複合体を標的とする自己抗体(抗複合体抗体)のaPAPにおける意義を明らかにするため,FACS法による抗複合体抗体定量法を確立し,aPAP患者及び健常人の血清抗体価を測定した.抗複合体抗体はaPAP患者特異的に上昇し(感度90.5%,特異度100%),特筆すべきことに,aPAP患者の疾患重症度スコアと相関した.健常肺では,HLA class IIは肺胞マクロファージと気道上皮内の樹状細胞に発現していたが,aPAP肺では肺胞マクロファージに加え,気道上皮全体に高発現を認めた.これらの結果より,GM-CSF/HLA class II複合体発現細胞に対する抗複合体抗体作用がaPAP病態に関与する可能性が新たに示唆された.
日本呼吸器学会誌 第5巻増刊号 p.138(2016)