学術部会賞 学術講演会演題賞(学術部会賞)選考講演会
- AS3 CTEPH患者における右室脂肪酸取り込みと肺循環動態の評価
- 坂尾誠一郎1),宮内秀行2),大門道子2),重城喬行1,2),杉浦寿彦1,2),田邉信宏1),小林欣夫2),巽浩一郎1) 千葉大学呼吸器内科学1),千葉大学循環器内科学2)
重症肺高血圧症患者では右室心筋が肥大し,同心筋細胞のミトコンドリア代謝機能異常による糖および脂肪酸代謝の変化が生じる.しかし右室心筋細胞における脂肪酸代謝について未だ不明な点が多く,その評価法も確立されていない.そのため我々は,BMIPP心筋シンチグラフィー検査を用い,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者の血栓内膜摘除術前後で同検査を施行し,右室心筋における脂肪酸の取り込みが肺循環動態と相関するかを調べた.当院で同手術を施行されたCTEPH患者のうち術前13例,術後8例,コントロール16例に同検査を施行した.CTEPH患者の術前右室ではBMIPPの取り込みが上昇し,術後血行動態改善と共に減少した(p=0.003).右室へのBMIPP取り込みは,右心カテーテルで評価された平均肺動脈圧と相関した(r=0.51; p=0.0228).本研究はCTEPH患者の右室における脂肪酸取り込みを,BMIPP心筋シンチグラフィーにより評価した初めての研究であり,その取り込みは手術により可逆性を認めた.同検査により,肺高血圧症での右室脂肪酸代謝を評価できる可能性が示唆された(Sakao S, et al., Annals ATS, Sep 10, 2015, in press).
日本呼吸器学会誌 第5巻増刊号 p.137(2016)