学術部会賞 学術講演会演題賞(学術部会賞)選考講演会
- AS1 急性肺障害における肺胞上皮再生メカニズムの検討
- 長谷川浩一,佐藤篤靖,上桝 潔,谷村和哉,濱川瑶子,佐藤 晋,室 繁郎,三嶋理晃 京都大学呼吸器内科学
【背景】2型肺胞上皮細胞(AT2)は肺の恒常性維持に重要であり,組織幹細胞として肺傷害からの再生に寄与する.再生時にAT2は増殖,1型肺胞上皮細胞(AT1)へ分化することが知られるが,その過程は未だ明らかでない.【目的】肺障害からの再生メカニズムをAT2の動態から検討する.【方法】ブレオマイシン(BLM)急性肺障害モデルを用いて以下2つの実験を行った.(1)AT2特異的にGFPを発現するマウスを作製し,BLM投与後のAT2の動態を組織学的に検討した.(2)正常マウス肺からAT2を99%の純度で単離する方法を確立し,BLM投与後のマウスに経気道的に移植したのち移植細胞の動態を観察した.【結果】(1)BLM投与後3週目に,線維化の強い部位でAT2からAT1への分化を確認した.(2)正常マウス肺より単離,移植したAT2は,BLM投与後3週目にAT2とAT1が混在するコロニーを肺内で形成する一方,一部は線維化病変内でAT2マーカー分子の発現を失い集簇していた.移植した細胞をフローサイトメトリーを用いて再度単離し,AT2の分化を確認した.【結語】細胞の再生過程は傷害部位の微小環境の変化に依存する可能性が示唆された.再生様式の変化と疾患発症との関連を検討することが今後重要である.
日本呼吸器学会誌 第5巻増刊号 p.137(2016)