会長挨拶
第60回日本呼吸器学会学術講演会開催にあたって
Conquer Respiratory Diseases
~呼吸器疾患の克服に向けて~
第60回日本呼吸器学会学術講演会を、2020年4月24日(金曜日)から26日(日曜日)の3日間にわたり、愛知県名古屋市「名古屋国際会議場」で開催させていただく予定でした。しかし、2019年11月に中国武漢で発生が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、2020年2月より世界的流行をきたした影響で、学術講演会を2020年9月20日(日曜日)~ 22日(火曜日)に神戸コンベンションセンターへ変更しました。これまで、感染リスクに警戒しながら開催できる学術講演会実施のあり方につき検討してまいりましたが、COVID-19は未だ終息に向かう気配はなく、学術講演会での感染リスク、密な人の集合を避ける工夫などの課題を考え、9月20日~22日の神戸コンベンションセンターでの現地開催を断念し、Web開催のみによる学術講演会開催となります。開催形式の大幅な変更に伴い、皆様には多大なるご心配とお手数をお掛けいたしますことお詫び申し上げますとともに、ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。
日本呼吸器学会は「日本胸部疾患学会」として1961年に設立され、第1回学術講演会開催から60回の節目となります。現在の学会員数は12、500名を越え、わが国だけでなくアジアにおける呼吸器病学の研究、教育、診療の代表となる学会となりました。本学術講演会のテーマは、「Conquer Respiratory Diseases ~呼吸器疾患の克服に向けて~」としました。テーマを考える上で、私たち呼吸器診療に携わる者の強い意志を示したいと考え、「Conquer ~克服する~」と強い表現としました。呼吸器診療は、呼吸器感染症、胸部悪性腫瘍、生活習慣病としてのCOPD、喘息・間質性肺炎などのアレルギー・自己免疫疾患、遺伝性・非遺伝性の稀少呼吸器疾患等の診断・治療から、急性期から慢性期までの呼吸管理、呼吸リハビリテーションなど、診療の知識や技術は幅広く多様です。また、これらの疾患は、社会の高齢化により格段にその割合は増加すると予想されます。呼吸器疾患の多くは、 common diseaseですが、一方で、いずれも難治の疾患です。学会が一丸となって難治の呼吸器疾患の克服に向けて果敢に挑戦してゆく姿勢を、社会に示したいと願っています。
本学術集会の新たな取り組みとして、Round table discussionを企画しました。ATS、ERS、APSRから若い研究者(Young Investigator)を含む27名の海外招聘者が参加し、彼らと共に日本の若い研究者・医師が、国際的環境の中でFace-to-faceで積極的に参加・討論できる場を設ける予定でおりましたが、国際的渡航禁止の状況下では開催ができません。次年度以降の企画に期待したいと考えています。
当初、本学術講演会は、1.シンポジウム形式の企画を少なくすることにより、多くの若い研究者による発表、討論の場となることを意図したこと、2.患者さんをはじめとするあらゆるステークホルダーの学会参加、患者さんが主体的に参加できる患者会企画、3.関連学術団体との共同企画、4.日本呼吸器学会のホームページへのアクセスで「誤嚥性肺炎、肺炎」での検索・閲覧が最も多いことから、市民公開講座のテーマを、「肺炎予防と健康長寿」として多職種による講演企画など、多くの取り組みが企画されていました。残念ながら、感染リスクの回避やWeb開催から多くの企画を実施することができませんが、現代社会が初めて経験する新たな病原体(SARS-CoV-2)のパンデミックによる未曾有の医療・社会被害の中で、私たち全員が力を合わせて乗り越えてゆくことが今こそ求められています。
期間を延長してWeb講演を閲覧できるようにしていますので、時間を気にせず、また、従来であれば同時に聴講出来ない企画も参加できます。学会員の研究発表、交流の場として本講演会が役立ち、呼吸器病学のさらなる発展に寄与できることを期待しています。多くの皆様のWebでのご参加をお待ちしております。
第60回日本呼吸器学会学術講演会 会長
国立病院機構 理事 名古屋医療センター 院長
長谷川 好規