お知らせ
高額療養費制度の改定に関する声明
呼吸器学会
近年の医療制度改革において、高額療養費制度の自己負担限度額引き上げが検討されております。この改定は、がんや悪性腫瘍のみならず、慢性呼吸器疾患をはじめとするさまざまな疾患の診療に影響を及ぼす可能性があります。日本呼吸器学会は、日頃より国民の健康維持と医療制度の安定に尽力されている関係各所の皆様に深く感謝申し上げるとともに、学会として以下の点についてご配慮をお願い申し上げます。
- 広く国民への周知と十分な議論の必要性
高額療養費制度は、医療費の負担軽減を目的とし、多くの患者の治療継続を支えてきました。今回の改定がもたらす影響について、患者や医療関係者のみならず、国民全体に広く周知し、慎重に議論を深める必要があります。現場の意見を十分に反映させる機会が確保されることをお願い申し上げます。 - 国家財政の健全化と医療福祉の両立を目指す適切な制度設計
医療制度の持続可能性を確保するために、国家財政の健全化は重要な課題です。しかしながら、医療福祉とのバランスを適切に考慮し、患者の負担が過剰にならない制度設計が求められます。財政健全化と医療アクセスの維持を両立できるよう、多様な視点から慎重な検討を行っていただきたく存じます。 - 多様な疾患に対する影響を考慮すること
高額療養費制度の見直しは、がん・悪性腫瘍だけでなく、慢性呼吸器疾患をはじめとする多様な疾患の治療継続にも影響を与える可能性があります。例えば、COPDや気管支喘息、間質性肺炎などの慢性疾患は長期的な治療が必要であり、患者の経済的負担が増すことで適切な医療を受ける機会が損なわれることが懸念されます。また、呼吸器疾患に処方される生物学的製剤は比較的高額であり、今回の改定によりこれらの治療を受ける患者の経済的負担が一層増大することが予想されます。さらに、制度改定により治療の手控えが生じた場合、疾患管理が不良となり、高齢者の健康維持・生命維持に支障をきたすだけでなく、若年から壮年の慢性呼吸器疾患患者においては、健全な成長への障害や生産性の低下につながる可能性も懸念されます。適切な治療を継続できるよう、十分な配慮をお願い申し上げます。
日本呼吸器学会は、国民の健康と医療の適正な提供を守るため、適切な制度設計がなされるようお願い申し上げます。
一般社団法人日本呼吸器学会 理事長 髙橋和久