お知らせ

世界禁煙デーにあたって

呼吸器学会

世界禁煙デーにあたって

日本呼吸器学会は、世界禁煙デー(World No Tobacco Day)に賛同し、応援します


毎年5月31日は、世界保健機構(WHO)が定めた世界禁煙デー(World No Tobacco Day)です。喫煙は、がん、心筋梗塞、脳卒中など多くの疾患との関連が明らかになっており、WHOなどの最近の試算によると、日本でタバコが原因とされる死亡数は、2000(平成12)年には114,200人(男性90,000人、女性24,200人)に達しています。これは20年で約2倍に増加しており、この傾向はさらに続くことが予想されています。1989年にWHOは毎年5月31日を「世界禁煙デー」と定め、喫煙しないことが一般的な社会習慣となることを目指して様々な活動を展開しています。日本呼吸器学会ではタバコの有害性や禁煙の重要性に関する資材の作成や啓発活動などを行ってきました。これからも、毎日がタバコのない日になるよう、そして望むと望まざるとにかかわらず全ての受動喫煙がなくなるよう、努力してまいります。

今年のテーマは、「The Secret's Out(タバコの秘密を暴く)」です


WHOによればタバコに関連した疾患などで死亡する人は全世界で年間800万人にのぼります。そしてタバコ産業はさまざまな新製品や巧妙な広告戦略によって多くの若い世代を取り込もうとしています。

世界禁煙デー2020 キャンペーン目標

  • タバコ関連企業が行っている情報操作、とくに新しい製品やフレーバーなど若者向けのマーケティング戦術の実態を明らかにします。
  • 将来にわたってタバコ製品が使われ続けるようにタバコ産業がどんな戦略を考えているか、若い世代に理解してもらいます。
  • メディアや家庭、学校などのインフルエンサーを支援することで巨大タバコ産業と戦い、若者を守り、社会の変化を加速します。

WHOホームページ

https://www.who.int/news-room/campaigns/world-no-tobacco-day/world-no-tobacco-day-2020

タバコは新型コロナウイルス感染のリスクを高めます


新規感染者数が減少傾向となり、緊急事態宣言も解除された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、日本国内だけで800人、世界では30万人を超える方が命を落としています。これまで喫煙者ではCOVID-19が重症化しやすいことが指摘されてきましたが、最新の研究でそのメカニズムが明らかになりました。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はヒトの細胞に侵入する際に細胞の表面にあるACE2という分子を利用しますが、喫煙によってACE2が増えることが示されています。喫煙者本人だけでなく、周囲の人でも受動喫煙によってウィルスの侵入口となるACE2が増えるため、感染者の重症化やさらなる感染拡大につながる可能性が指摘されています。

Smith JC. et al.,"Cigarette smoke exposure and inflammatory signaling increase the expression of the SARS-CoV-2 receptor ACE2 in the respiratory tract." Developmental Cell Epub 2020 May 16.

肺は、"環境を映す鏡" です


肺は呼吸をするために外界に開かれた臓器です。1日に1万リットル以上の空気を吸い込み、生命の維持に必要な酸素を体内に取り込み二酸化炭素を呼出しています。肺の最深部には5億個をこえる肺胞があり、50~100 m2の広大な表面積を介して毛細血管と接し、酸素の取り込みと二酸化炭素の排出(ガス交換)を行っています。吸入される外気と毛細血管の血液は、わずか0.3 m ほどの厚さの組織により隔てられているだけです。このように精緻な構造で外界と接する肺は、吸入する空気に有害物質や微粒子が含まれていれば、また、そのような気体を慢性的に吸入し続けていれば、いずれ何らかの健康被害をこうむることは容易に想像できると思います。身近な問題として、工場や自動車からの排気ガスによる大気汚染が健康被害をもたらしたことは、よくご存知と思います。肺は"環境を映す鏡"、とたとえられる由縁です。健康のためには、クリーンな空気を吸いましょう!

あなたの呼吸をタバコに奪われてはいけない。タバコではなく健康を選びましょう!


令和2年5月31日
日本呼吸器学会 理事長
横山 彰仁