COVID-19 FAQ広場

FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。

Q50. SARS-CoV-2ワクチン接種後の抗体価について、感染予防に効果を示すカットオフ値は存在するのでしょうか。また日本人でワクチン接種後どの程度抗体価が保たれるのか、データがあれば教えてください。

ワクチン

回答

ワクチンの有効性の評価には以下の3つがあるとされています。①免疫原性(immunogenicity):被接種者の血清中の抗体のレベル(抗体価)が感染や発症を防ぐレベルに達した人の割合で評価します。②臨床試験での有効率(efficacy):接種群と対照(コントロール)群との発症率の差を比較します。重症化率、致命率、無症状者を含めた感染率を指標とすることもあります。③実社会での有効率(effectiveness):多くの接種対象者にワクチンが普及したあと、目的の感染症が実際にどのくらい減少したかを評価します。接種が進んだ COVID-19 ワクチンでは、実社会での有効率がすでに報告されています1)。現在わが国で保険適応となっている抗体価検査試薬はありません。また、ワクチンの抗体価を測定する検査試薬は複数あり、それぞれによって測定値が異なります。さらにワクチンで誘導される免疫には液性免疫と細胞性免疫がありますが、実地では測定の容易な液性免疫が評価に用いられています。そのため確立した感染予防に効果を示すカットオフ値はありません。ファイザーのワクチン(コミナティ筋注)では2回目接種後の抗体価は中央値524.5(95%CI, 459.7-598.4)とされています2)
日本人の抗体価の変化について、藤田医科大学プレスリリースではワクチン接種前から約3ヶ月後までの血液が得られた209名(男性67名、女性142名)の抗体価を測定し、3ヶ月後の抗体価の平均値は、2回目接種後に比べて約1/4に減少していました。また、抗体価は年代・性別を問わず全ての被検者で減少していました。今回の結果は、日本人においても時間の経過とともにワクチンの効果が低下することを示唆する結果と考えられます3)

  1. COVID-19ワクチンに関する提言(第3版) 日本感染症学会
    https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2107_covid-19_3.pdf
  2. Walsh EE, et al. Safety and Immunogenicity of Two RNA-Based Covid-19 Vaccine
    Candidates. N Engl J Med 383(25):2439-2450, 2020.
  3. ファイザー社の新型コロナワクチンで、接種約3ヶ月後に抗体価が低下することを発表しました 藤田医科大学プレスリリース
    https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv000000b3zd.html

(回答日:2021/10/8)