COVID-19 FAQ広場
FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。
Q23. 抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬治療中の患者にCOVID-19ワクチン接種を行う場合の注意点は?接種時期はいつが良いか。副反応やワクチンの有効性について一定の見解はありますか。
ワクチン
回答
接種時期
がん薬物療法中の患者に対してCOVID-19ワクチン接種を行う場合の接種時期ですが、現在(2021.6.9.時点)のようにワクチンへのアクセスに制限がある場合、原則として受けることができる時に受けるという判断で良いかと思います。その上で、以下の時期を避けることができるのであれば可能な範囲で避けた方が望ましいかもしれません。
- がん薬物療法投与予定日前の2,3日以内(ワクチン接種後の副反応で治療スケジュールが延期になることを避けるため)
- 細胞傷害性抗がん剤投与後の白血球・血小板減少時期(潜在的なワクチン効果減弱の可能性や筋肉注射による血種のリスクを避けるため)
注意点
がん薬物療法中にワクチンを接種した場合、感染予防効果がどの程度であるのかは現時点で明らかでなく、ワクチン接種後も感染予防対策を継続するよう患者に指導することが重要です。
副反応や有効性についての一定の見解やエビデンスの有無について
免疫チェックポイント阻害薬治療中に137名を対象に行った電話アンケート調査では、健常者対照群と比較して免疫チェックポイント阻害薬治療中の患者で筋肉痛の頻度が有意に高かったものの、新たな副反応の発生はなく、ワクチンの副反応による入院もなかったと報告されています1)。
また、95例の固形がん患者を含む151例の悪性疾患患者を対象にしてCOVID-19ワクチンによる抗体価の上昇を調べた観察研究では、ワクチン接種を1度のみ行った場合、健常者対照群の94%で抗体価が上昇したのに対し、固形がん患者では38%にしか抗体価上昇を認めなかったと報告しています2)。しかし、3週間後に2回目のワクチンを受けた場合、95%に抗体価の上昇を認めていました。このため、この報告では、がん患者は優先的に2回目の接種を受けるべきと結論しています。
その他、がん薬物療法中のCOVID-19ワクチンの有効性・安全性に関するデータがいまだ十分でないため、多くの場合インフルエンザワクチンなど他のワクチンによるこれまでの経験から判断しているのが現状です。現時点では、COVID-19に罹患するリスクと推定されるCOVID-19ワクチンによるリスクとを鑑みて、がん薬物療法中の患者には国内外を問わずワクチン接種が勧められています。
国内外のがん患者のCOVID-19ワクチンに関する推奨は、がん関連3学会合同新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A3)、日本肺癌学会Expert opinion4)、米国臨床腫瘍学会5)、全米総合がん情報ネットワーク6)など様々な推奨がなされており、これらもご参照ください。
参考資料
1) Monin L, et al. Safety and immunogenicity of one versus two doses of the COVID-19 vaccine BNT162b2 for patients with cancer: interim analysis of a prospective observational study. Lancet Oncol. 2021;22:765-778.
2) Waissengrin B, et al. Short-term safety of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine in patients with cancer treated with immune checkpoint inhibitors. Lancet Oncol. 2021;22:581-583.
3) https://www.jsmo.or.jp/news/coronavirus-information/qa_vaccinel_3gakkai.html
4) https://www.haigan.gr.jp/modules/covid19/index.php?content_id=1
5) https://www.asco.org/asco-coronavirus-resources/covid-19-vaccines-patients-cancer
(回答日:2021/6/10)