COVID-19 FAQ広場

FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。

Q71. 軽症のCOVID-19患者に対する抗ウイルス薬治療と抗体療法の適応について、ワクチン接種歴や基礎疾患はどのように考慮したらよいでしょうか。また、透析患者や喘息発作など基礎疾患による一時的な低酸素血症であっても、中等症として治療を行うべきでしょうか。

治療

回答

ワクチン接種歴がある患者では重症化するリスクは低く、実際に肺炎像を呈する患者を見ることはほとんどありません。しかし第7波では、接種歴がある高齢者や、血液疾患などを背景とした免疫不全者で重症化してしまうケースをしばしば経験します。そしてそれらでは発熱が持続する症例が多い印象です。明確なエビデンスが存在するわけではありませんが、ワクチン接種歴があるとしても、特に高齢者や免疫不全者で高熱がある場合は抗ウイルス薬治療や抗体療法の導入を考慮すべきだと考えます。米国NIHの治療ガイドラインでも非入院患者(軽症~中等症Ⅰ)における治療薬使用対象として、高齢者や基礎疾患等により十分な免疫反応が期待できない免疫不全者が挙げられています1)。
透析患者や喘息発作などの基礎疾患による一時的な低酸素血症であれば、基本的には中等症Ⅱとしての対応は不要だと思います。ただそれぞれの患者の病態が、ウイルス性肺炎の悪化なのか、基礎疾患による一時的な悪化かの臨床的なアセスメントこそが重要であり、基礎疾患に対する十分な治療とその評価が求められることは論を俟ちません。
ただ透析患者は重症化リスクが高いことが知られており、上記のように発熱が続くような場合には治療対象になり得ます。本邦におけるCOVID-19の透析患者を対象としたコホート研究では、抗ウイルス薬による透析患者の治療は、生存期間を延長し、死亡リスクを低下させる可能性が示されています2)。喘息患者はCOVID-19に感染した際、人工呼吸器使用率やICU入室率が高い一方、致死率は高くないことが知られますが3)、重症喘息患者ではCOVID-19による致死率が上昇するという報告もあります4)。新型コロナウイルス感染で発作を来たしている状態でもあり、重症喘息の患者、特に発熱が続いている患者には治療適応があると考えます。

1) NIH COVID-19 Treatment Guidelines: Therapeutic Management of Nonhospitalized Adults With COVID-19
(https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/management/clinical-management-of-adults/nonhospitalized-adults--therapeutic-management/ Accessed 24 Nov. 2022)
2) Kikuhci K, et al. Survival and predictive factors in dialysis patients with COVID-19 in Japan: a nationwide cohort study. Ren Replace Ther. 2021;7(1):59.
3) Guan WJ, et al. Chronic Respiratory Diseases and the Outcomes of COVID-19: A Nationwide Retrospective Cohort Study of 39,420 Cases. J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Jul;9(7):2645-2655

(回答日:2022/9/24)