COVID-19 FAQ広場
FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。
Q54. 中和抗体療法(カシリビマブ/イムデビマブ)について、その適応とエビデンスに関して教えてください。適応外患者への使用はどのように扱うべきでしょうか。またSARS-CoV-2ワクチン接種後のブレイクスルー感染に対して中和抗体療法の使用はどのように考えるべきでしょうか。さらに、中等症Iの症例に対する、レムデシビルと中和抗体との単剤使用もしくは併用に関して、その適応はどのように考えたらよいでしょうか。
治療
回答
中和抗体療法(カシリビマブ/イムデビマブ)は、発症から時間の経っていない、重症化リスク因子を有する軽症COVID-19患者を対象としたランダム化比較試験で入院または死亡に至った被験者の割合を減少させたエビデンス1)を元に、日本でも2021年7月に特例承認されました。さらに大規模な後方視コホート研究においても、カシリビマブ/イムデビマブのICU入院と死亡に対する有効性が示されています2)。SARS-CoV-2ワクチン接種後のブレイクスルー感染に対するカシリビマブ/イムデビマブの投与に関しては、米国FDAがspecial alertsとして提言を発表しています3)。その中では、SARS-CoV-2ワクチン接種が2回完了していない、あるいはワクチン2回接種後においても十分な抗体産生がない、発症早期の軽症〜中等症COVID-19患者に対してもカシリビマブ/イムデビマブの投与を考慮する、としています。さらに、WHOよりカシリビマブ/イムデビマブの投与を考慮する適応(conditional recommendation)として、血清SARS-CoV-2抗体が陰性の重症COVID-19患者を追加され、従来の重症COVID-19治療(ステロイドなど)との併用で使用する、としています4)。
国内におけるカシリビマブ/イムデビマブの適応は、SARS-CoV-2 による感染症の重症化リスク因子を有し,酸素投与を要しない発症7日以内の患者(厚生労働省 診療の手引きで軽症から中等症I)となっています5)。レムデシビルとの併用についてはエビデンスがありません。2021年10月11日に中外製薬より厚生労働省へカシリビマブ/イムデビマブの適応拡大申請が行われていますが、現時点で適応外使用は原則認められていません。
- Weinreich DM, et al. N Engl J Med 2021;384:238-251.
- Razonable RR, et al. E Clin Med 2021, DOI:
Casirivimab-Imdevimab treatment is associated with reduced rates of hospitalization among high-risk patients with mild to moderate coronavirus disease-19 - ScienceDirect - https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/fda-authorizes-regen-cov-monoclonal-antibody-therapy-post-exposure-prophylaxis-prevention-covid-19
- Therapeutics and COVID-19. Living guideline. World Health Organization. Sep 24, 2021.
- 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第6.0版
(回答日:2021/10/19)