COVID-19 FAQ広場
FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。
Q47. COVID-19に対するイベルメクチンの効果について、最新のエビデンスを教えてください。今後軽症者に対して承認される可能性はいかがでしょうか。
治療
回答
2021年3月31日に公表されたWHOのliving guidelineにおいて、COVID-19に対するイベルメクチン投与を行った7つのRCTの結果が紹介されています。イベルメクチンの死亡に対する統合オッズ比は0.19(95%CI 0.09-0.36)と示されていますが、エビデンスの確実性が非常に低いことから臨床試験以外での使用を推奨していません。最近の主なメタアナリシス研究では、結果の異なるものが示されています。Bryantらによる報告(Am J Ther. 2021 Jun 21;28(4):e434-e460.)では、イベルメクチン投与により有意に死亡率が減少した(リスク比0.38, 95%CI 0.19-0.73)とする一方、Romanらによる解析(Clin Infect Dis. 2021 Jun 28;ciab591.)では減少しなかった(リスク比0.37, 95%CI 0.12-1.13)としています。この結果の違いには、対象となった臨床試験が異なること、それぞれの研究におけるバイアスリスクの評価が異なることなどが影響しているものと考えられます。医学研究におけるエビデンスレベルの分類において、システマティックレビューが最も高い位置に示されていますが、あくまでそれを行う研究者の評価者バイアスが存在するため、メタアナリシス自体の評価も行うことが重要になります。
もっとも、COVID-19に対するイベルメクチンの効果は、単独のRCTにおいても質の高い研究結果が示されていません。これまでの報告では、重症者より軽症者に対して有効となる傾向がありますが、その他患者の背景等を考慮した有効性の検証が必要かもしれません。ただし、現状では質の高いエビデンスは示されていません。承認のためには、十分な客観性を持った有効性および安全性の評価が必要になります。より正確な判断のため、現在行われている国内外の質の高い臨床研究結果を待ちたいところです。
(回答日:2021/10/7)