COVID-19 FAQ広場
FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。
Q27. COVID-19治療における抗凝固薬使用についての指針を教えてください。重症度によって、その内容は変わるでしょうか。また、NOACやリコモジュリンの使用についても教えてください。
治療
回答
新型コロナウイルス感染症(COVID 19 )における静脈血栓塞栓症予防の診療指針(2021年4月5日版( Version 2 .0)日本静脈学会 肺塞栓症研究会 日本血管外科学会 日本脈管学会)では、
- 「軽症」「中等症Ⅰ(息切れ、肺炎所見)」では不要
- 「中等症Ⅱ(酸素投与が必要)」では、予防用量である低用量未分画ヘパリン(10,000単位/日あるいは200単位/kg/日の持続点滴)を考慮、特にDダイマー高値例(正常上限の3~4倍以上)は高リスク
- 「重症(ICU管理あるいは人工呼吸器)」では、予防容量未分画ヘパリンの投与
が推奨されている。予防量投与ではAPTT測定による用量調節を必要としない。APTTを正常の2~3倍に延長させる必要はないが、過剰延長や血小板減少には注意する。投与期間に関して明らかなエビデンスは無く、症状改善やD-dimer低下が一つの指標と考える。実際、4倍以上Dダイマーが上昇する患者では,ヘパリンによる抗凝固療法による死亡率の減少が報告されている(J Thromb Haemost. 2020;18(4):844-847)。
直接経口抗凝固薬(DOAC)に関してエビデンスはないが、心疾患のためにすでにDOACを内服している70歳以上のCOVID-19発症例では、生命予後(p=0.01、log-rank検定)が良いとの後方視的検討結果が報告されている(Eur J Intern Med. 2020 Jul; 77:158-160.)。
播種性血管内凝固症候群(DIC)治療薬トロンボモジュリンに関してもエビデンスはない。COVID-19症例ではD-ダイマーレベルが異常値を示すが, DICは明らかでない(Br J Haematol. 2020 Jun;189(6):1044-1049.)。両側びまん性の肺炎は、DICとは異なる肺特異的血管障害、肺血管内凝固症候群(PIC)と認識されており(Autoimmun Rev. 2020 Jun;19(6):102537.)、同薬剤の有効性については今後臨床試験が必要となる。
(回答日:2021/6/13)