COVID-19 FAQ広場
FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。
Q10. ステロイド投与終了後にリバウンドする症例についての特徴や、肺病変が遷延しやすい症例のマーカーがあるかどうか、リバウンド後の治療について教えてください
治療
回答
リバウンド現象の正確な疫学はわかっていませんが、多くの実地臨床家が経験しており、海外でも未解決の問題として認知されているようです(参考文献1)。リバウンド現象には2パターンあると考えられます。一つはステロイド投与減量中もしくは終了直後の再燃(多くは1週間以内)で、もう一つは遠隔期(多くは1週間~数週間後)の器質化肺炎です。
前者はエビデンスが不足しておりますが、COVID-19診療エキスパートオピニオン委員会内の単独施設のパイロット研究(論文投稿中)ではCOVID-19でステロイド治療を受けた患者の約20%が初期ステロイド治療不応で病勢悪化し、10%弱がステロイド減量中もしくは終了後にリバウンドしていました。リバウンド時には発熱再燃や酸素需要増加が多いです。COVID-19発症日からリバウンド現象が起きるまでの期間の中央値は12日でした。ステロイド治療成功例におけるステロイド投与終了日はCOVID-19発症日から中央値で13日目でしたが、リバウンド例は10日目でした。以上からはサイトカインストームが終わる前にステロイドを終了したことがリバウンドの一因である可能性があります。したがってステロイドは一旦使用するなら症状出現から14日目くらいまで使用すればリバウンドを避けられる可能性があります。ただしその妥当性は検証されていません。リバウンドは予後良好であり、死亡例はなく、半数は無治療で軽快し、半数は元のステロイド治療再開で速やかに改善しました。
後者は予後良好であることが多く(参考文献2)、COVID-19診療エキスパートオピニオン委員会の経験と意見としては、遠隔期にCOVID-19後器質化肺炎を診断した場合には、呼吸器内科医がしばしば実地臨床で遭遇する器質化肺炎と同様に無治療で経過観察もしくはプレドニゾロン0.5mg/kg/dayくらいからのステロイド治療を行えば長期間尾を引くことなく治癒する例が多いと思います。しかしながらCOVID-19の急性期に引き続いて重症化する例も報告されており(参考文献3)、標準的なデキサメタゾン6mg×最大10日間の量と投与期間を超えたステロイド治療も検討されますが、ケースバイケースであり定型的な投与法の提案は困難です(参考文献3)。
これらの現象を見抜けるマーカーは今のところわかっておりません。
参考文献
1)Prescott HC, Rice TW. Corticosteroids in COVID-19 ARDS: Evidence and Hope during the Pandemic. JAMA 2020;324(13):1292-1295.
2)Yan Wang, Chao Jin, Carol C. Wu, et al. Organizing pneumonia of COVID-19: Time-dependent evolution and outcome in CT findings. PLoS ONE 2020;15(11):e0240347.
3)Vadász I, Husain-Syed F, Dorfmüller P, et al. Severe organising pneumonia following COVID-19. Thorax 2021;76:201-204.
(回答日:2021/3/11)