COVID-19 FAQ広場
FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。
Q4. ステロイド投与が無効で呼吸不全が悪化する症例に対してはどのような治療が効果的でしょうか
治療
回答
レムデシビルなどの抗ウイルス薬との併用で、デキサメサゾン 6mg/day (内服) または6.6mg/day (点滴静注) でステロイド療法を開始し、使用開始10日未満で呼吸不全が悪化する症例に対してどのような薬物治療が有効か? という質問と解釈して回答します。
RECOVERY trialで予後改善のエビデンスがあるデキサメサゾン 6mg/dayで治療を開始し、治療開始時に人工呼吸管理を要する群(本邦での重症に相当)での28日死亡割合は29.3%、人工呼吸管理なし・酸素投与のみの群(本邦の中等症Ⅱに相当)では23.3%、またこの群での呼吸不全が悪化し人工呼吸管理に至るあるいは死亡する症例は28.1%あると報告されているように(文献1)、ステロイド療法を行っても、呼吸不全が悪化、予後不良となる症例が一定割合存在します。
デキサメサゾン 6mg/dayが不応と判断された際、その後にどのような薬物治療をするとよいかを示すエビデンスが乏しいのが現状です。細菌、あるいは真菌感染を除外したうえで、呼吸不全悪化の原因がCOVID-19肺炎によるものであると判断される場合には、抗炎症治療を強化したほうがよいケースが多いため、エキスパートオピニオンとしてステロイドの増量(パルス療法)(文献2)、またはステロイド以外の抗炎症薬であるIL-6阻害剤(文献3)、JAK阻害剤の追加(文献4)を提案します:
- 例1:ステロイドパルス療法(mPSL 500mg~1g/day x 3 days) → 維持はmPSL 0.5~1 mg/kg/day
- 例2:IL-6阻害剤(トシリズマブ)、JAK阻害剤(バリシチニブ)を追加(※この場合、ステロイド量は据え置きがよい)
参考文献
- RECOVERY Collaborative Group, Horby P, Lim WS, et al. Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19 - Preliminary Report. N Engl J Med. 2020;384(8):693-704.
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2021436?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed. - Edalatifard M, Akhtari M, Salehi M, et al. Intravenous methylprednisolone pulse as a treatment for hospitalised severe COVID-19 patients: results from a randomised controlled clinical trial. Eur Respir J. 2020;56(6):2002808.
https://erj.ersjournals.com/content/56/6/2002808 - RECOVERY Collaborative Group, Horby PW, Pessoa-Amorim G, Peto L, et al. Tocilizumab in patients admitted to hospital with COVID-19 (RECOVERY): preliminary results of a randomised, controlled, open-label, platform trial. medRxiv.
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.02.11.21249258v1 - Kalil AC, Patterson TF, Mehta AK, et al. Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19. N Engl J Med. 2021;384(9):795-807.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2031994
(回答日:2021/3/9)