COVID-19 FAQ広場

FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。

Q21. HFNCについて、COVID-19診療における有益性とその適応、設定流量、伏臥位使用での注意点、感染対策上の注意点について教えてください。またHFNC使用中の人工呼吸器管理への移行について、何を基準に判断すべきでしょうか。

呼吸管理

回答

HFNCのCOVID-19診療における有用性として、HFNCを導入することで、人工呼吸器管理を回避で切る可能性があること(Am J Respir Crit Care Med. 2020 Oct 1;202(7):1039-1042., Ann Intensive Care. 2021 Feb 27;11(1):37.)、それに伴い医療スタッフへの負担が軽減できることにあると考えます。また、超高齢者など挿管管理を望まない高度の呼吸不全患者さんの管理もある程度までは対応できることもメリットのひとつと考えます。
設定流量に関しましては、HFNCが経鼻カニューラや酸素マスクと比較しても飛沫やエアロゾル産生量は増加せず、流量増量によってエアロゾル産生は増加しなかったという報告や(Crit Care. 2021 Feb 27;25(1):89. , Am J Respir Crit Care Med. 2020 Oct 15;202(8):1115-1124.)、HFNCにサージカルマスク装着を併用することにより、飛沫、エアロゾルが有意に抑えられたという報告もあります(Crit Care. 2021 Feb 27;25(1):89)。さらに、HFNC推奨により、院内感染の増加はみられなかったという報告もあり(Am J Emerg Med 2021;39: 158-161)、HFNC使用により院内感染リスクが極めて高くなるということはないと考えられます。ただし、HFNC管理中に広範囲のエアーサンプリングを実施した研究での報告はないため、本人へのサージカルマスクの着用併用が難しい場合には、可能な限り、陰圧室管理が望ましいのではないかと現時点では考えられます。
腹臥位療法に関しまして、COVID-19による呼吸不全でも、他のARDS同様に有効であると考えられます。COVID-19では、背側に陰影が分布する症例が多く、腹臥位にすることで、背側の無気肺の改善や、換気血流不均等の是正による機序で効果を示すものと考えられます。人工呼吸器管理下での体位変換は、様々なデバイスがあり注意が必要であり多くの人手を要しますが、HFNC管理下における症例では、ご自身での体位変換が可能であれば、患者本人に無理のない範囲内で適宜体位を変換いただくようにすれば、導入は比較的容易と考えられます。実際に当院でも積極的に実施し、挿管管理が回避できた症例を多く経験しております。
しかし、HFNCでは対応できる呼吸不全に限界があるため、気管内挿管実施時のリスクを下げるためにも、HFNC管理では対応が難しい呼吸不全例では速やかに挿管・人工呼吸器管理に移行すべきであると考えます。その目安としては、患者さんの意識状態、呼吸不全の程度(SpO2、呼吸数)が挙げられます。ひとつの指標としてROX index (=SpO2/FiO2/RR)があります。HFNC装着12時間後のROX index <4.88の症例では、有意に人工呼吸器管理への移行率が高かったという報告もあり(J Crit Care. 2016 Oct;35:200-5.)、参考所見として使用できると考えられます。事前にそれぞれの施設でHFNCから挿管管理に移行する基準を設けることでリスク回避につながるのではないかと考えられます。

(回答日:2021/6/9)