COVID-19 FAQ広場
FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。
Q17. COVID-19後遺症を予測するスケールにはどのようなものがありますか。また日本語版はあるでしょうか/Q.18. COVID-19後遺症を予測する検査項目はあるでしょうか
後遺症
回答
後遺症には倦怠感、呼吸困難感、胸痛、味覚・嗅覚障害のような自覚症状や肺拡散能の低下を含む肺機能障害や心血管系障害や精神的疾患など多岐にわたります。英国からの検討では発症1週間で5つ以上の症状を経験した人は1か月時点で症状が続くリスクが高いと言う報告があります(odds ratio:3.53 (2.76-4.50))1。しかし、この研究はアプリを用いた自己申告のデータで採血などの検査データとは紐づいておらず、予測する検査項目などはありません。現在、報告されている後遺症を系統的に分類した際に①重症化した症例で起きやすい後遺症、②重症化の程度に関係なく発症する後遺症と分けることで、後遺症の起こりやすい傾向は理解できます。
① 重症化した症例で起きやすい後遺症
重症肺炎を呈した患者では非重症肺炎と比べて有意に%DLCOや%TLCが低下おり、Dダイマーは肺拡散能低下を予測する独立した因子であったという報告もあります2,3。また、和歌山県が報告4した後遺症アンケートにおいても重症患者では退院後の呼吸困難感や倦怠感の割合が高く、これは前述の肺散能の低下が寄与している可能性があります。
② 重症化の程度に関係なく発症する後遺症
嗅覚障害や味覚障害は重症度や年齢などに関係なく発症しやすい後遺症です。和歌山県が報告した後遺症のアンケート調査では163人中30人で嗅覚障害、20人で味覚障害を認め、20-40歳代の若年者の割合はそれぞれ70%(21/30人)、65%(13/20人)と高率でした。またこれは軽症、中等症、重症の重症度にかかわらず約2割の患者に継続していました。
結論として重症度や年齢で起こりやすい後遺症はあるものの、現段階では検査値やスケールで予測は困難です。
参考文献
- Sudre CH, Murray B, Varsavsky T, et al. Attributes and predictors of long COVID. Nat Med 2021 (In eng). DOI: 10.1038/s41591-021-01292-y.
- Mo X, Jian W, Su Z, et al: Abnormal pulmonary function in COVID-19 patients at time of hospital discharge. Eur Respir J 55: 2001217, 2020
- Zhao YM, Shang YM, Song WB, et al: Follow-up study of the pulmonary function and related physiological characteristics of COVID-19 survivors three months after recovery EClinicalMedicine 25:100463, 2020
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https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/041200/d00203179_d/fil/kouhyou5.pdf
(回答日:2021/3/12)