COVID-19 FAQ広場
FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。
Q72. 高齢者のCOVID-19患者が入院後、10日を経過しても微熱や呼吸器症状が遷延することが少なくないですが、この場合何を基準に隔離解除したらよいでしょうか。また、隔離解除基準を満たしても、ADLなどが原因で退院が難しい場合、何を基準にして一般病棟への移床を考慮したらよいでしょうか。
退院・移動基準
回答
厚労省の診療の手引き第8.0版によれば入院患者は10日間、人工呼吸器等使用の重症例では15日間以上経過し、かつ症状軽快後72時間経過することが退院もしくは隔離解除の基準とされています。この際の症状とはCOVIDによるものを示すと考えられ、ご質問のような微熱や呼吸器症状が他の原因によると判断できれば無症状もしくは症状軽快と判断して隔離解除可能となります。そのためには患者の病歴、症状・検査値・画像所見とその経過などが参考になります。たとえば陰影の性状や分布(COVID特有の多発すりガラス陰影か、通常の気管支肺炎のような気道に沿ったコンソリデーション主体の陰影か)、経過(発症後しばらく経過してから出現したのか、発症とともに出現したのか)、喀痰量や培養の結果、抗生剤の反応性などから通常の細菌性肺炎や誤嚥性肺炎と考えられれば隔離解除できる場合があります。しかしCOVIDによるのかその他の病因によるのか判然とせず、症状が遷延する場合もありえます。この際に隔離解除をどの時点に置くかは個々の患者の状態(基礎疾患やADLおよび誤嚥の程度、免疫不全の有無など)を考慮して決めざるをえません。たとえば酸素吸入を要してもHOT患者の場合は従来の流量に戻れば症状消失と判断する、肺の基礎疾患あれば労作時や睡眠時の低酸素は許容する、などといった対応が考えられます。また15日以上経過しておれば24時間以上の間隔でPCR検査や抗原検査2回陰性をもって解除する、あるいはPCR陽性でもCt値を参考に解除するなどの方法もありえます。ただし重度免疫不全状態では培養可能なウイルス排出が長期持続することがあり、通常の基準よりも厳しい対応をとる必要があります。いずれにしても個別に病院の事情も考慮して感染症科医やICTとよく相談して決定すべきでしょう。なお診療の手引きによる退院基準を満たせば、一般病床管理で差し支えないと考えられます。
(回答日:2022/9/25)