Q14. COVID-19の重症化の機序について、全てサイトカインストームで説明はつくのでしょうか。また、COVID-19によるARDSにおけるDADはウイルスによる直接的な組織傷害でしょうか

病態 2021年03月11日

回答

　COVID-19の重症化はサイトカインストームでは説明がつかないという意見もあり（Leisman DE, et al. Lancet Respir Med, 2020: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33075298/ ）、機序についてはまだ十分に解明されていません。遺伝学的要因（Zeberg H & Pääbo S, Nature, 2020: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32998156/ : The Severe Covid-19 GWAS Group, New Engl J Med, 2020: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32558485/ ）やインターフェロンに対する自己抗体(Bastard P, et al. Science, 2020: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32972996/ )、Mucosal-associated invariant T (MAIT) 細胞などのT細胞の異常（Flament H, et al. Nat Immunol, 2021: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33531712/ ）など、臨床検体を用いた研究から様々な異常が重症化に関係すると報告されてきています。今後は、臨床の治験結果だけでなく、ワクチン接種も始まりますので、リバーストランスレーショナル・リサーチの視点からも機序の解明が期待されるところです。

　重症COVID-19でのDiffuse Alveolar Damageは、肺内血栓の頻度が多いのが特徴で(Hariri et al. Chest, 2020: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33038391/ )、肺胞上皮細胞（特にI型）と毛細血管内皮細胞が障害され、硝子膜形成と微小血栓が認められます。サイトカインストームを伴うARDSによって血管内皮の透過性が亢進する一方で、SARS-CoV-2ウイルスは肺胞上皮細胞のI型にもII型にも (Hou et al. Cell, 2020, https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32526206/ )、また、血管内皮細胞にも直接感染しうる（Ackermann M, New Engl J Med, 2020: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32437596/ , Varga Z, et al. Lancet 2020: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7172722/ ）とされ、ウイルスの直接的な組織障害も寄与する可能性があります。

（回答日：2021/3/11）