呼吸器Q&A
Q29. 在宅酸素療法が必要と言われました。
在宅酸素療法が必要と言われたあなた、からだの酸素が足りていません。
人間のからだがきちんと働くためには酸素は欠かせません。色々な病気でからだの酸素が低い状態(低酸素血症)があり、それによってからだに障害が出た状態を『呼吸不全』と呼びます。この状態が1ヵ月以上続く場合が慢性呼吸不全です。慢性呼吸不全を来す病気としてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺結核後遺症、間質性肺炎、肺がんなどが多いとされています。在宅酸素療法が必要と言われたあなたは、このような状態にあります。
この低酸素血症を改善するためには、くすりと同様に酸素を吸入する必要があります。酸素が十分あるかどうかは、動脈から採血して酸素分圧を測定します。また指にセンサーをつけて、指先の色でからだの酸素の量を知ることもできます(経皮的酸素飽和度)。安静時の動脈血の酸素分圧が、60mmHg以下(酸素飽和度が90%以下)の時、呼吸不全と言われます。
病院で酸素を吸入するように、自宅でも酸素を吸入できるようにしたものが在宅酸素療法です。一定の条件で、保険が適用されます。適用基準は動脈血酸素分圧が、55mmHg以下(酸素飽和度が 88%以下)です。また動脈血酸素分圧が、55mmHg以上でも、60mmHg以下であれば、睡眠時や運動時に低酸素血症になる場合なら適用になります。
自宅では、酸素供給装置(酸素濃縮器や液体酸素タンク)からチューブを通して酸素を吸入します。使用する酸素の量が少ない場合は、チューブの先は鼻の下で固定する鼻カニューレを用います。外出の際は、軽量の酸素ボンベを用います。良く使われる酸素濃縮器は小型の冷蔵庫のような機械で、家庭用電源で作動します。室内の空気の酸素濃度では呼吸不全の患者さんにとっては低いので酸素吸入には適しませんが、この機器で空気中の酸素を濃縮して酸素濃度を約 90%にして治療に使えるようにします。最近では、一部の重症の慢性呼吸不全に対して、より高濃度の酸素吸入が可能な在宅ハイフローセラピーが保険適応となりました。
酸素を吸入する量や時間は、主治医と相談して決めます。息切れの改善が一つの目安ですが、動脈血酸素分圧(酸素飽和度)がある程度改善するようにします。夜間は、呼吸の活動が低下して思いの外、低酸素血症になっていますので、酸素吸入が必要なことが多いとされています。
もし、病気によって肺の働きが悪くなって、酸素が足りないだけでなく炭酸ガスが高くなっている場合には、呼吸運動を助けるような装置が必要となります。
医療費、医療機器の維持費など経済的負担が増え、ご家族への負担も増えますが、色々な社会的資源を活用することができます。例えば、身体障害者福祉法で呼吸機能障害の認定が受けられる場合もあります。また介護保険も申請できますので、かかりつけの医療機関で相談してみてください。