呼吸器Q&A
Q22. 胸部エックス線画像で異常があり、類円形の影あるいは結節影だと言われました。
どのような状態か?
自治体が行う住民検診や職場で行う職域検診でこのような結果が出ることがあります。エックス線写真では空気は黒く、骨・筋肉・水分(血液など)が白く写ります。肺には大量の空気を含みますので、胸部エックス線写真では肺は黒っぽく見えて、心臓・血管・横隔膜(これは筋肉です)・背骨・肋骨などは白く見えます。これは正常です。しかし肺に何か病気ができると、黒っぽく見える肺のその部分だけが白っぽく見えるのですが、それが丸い場合を「結節影」と呼びますが、「類円形の影」などと言われることもあります。典型的な肺炎では肺の比較的広い範囲がべったりと白くなりますが、これとは異なります。
しかし、肺に病気があっても、心臓や血管、横隔膜などと重なるとはっきりと写らない場合もあります。
結節影の一例
結節影の一例:矢印で囲まれた丸く見える白っぽいものが結節影。これだけでは肺がんか、別の臓器のがんからの転移か、良性腫瘍か、それ以外の病気か区別できません。この例では精密検査の結果、肺結核と診断され、治療により完治しました。
どのような病気の可能性があるか?
肺がん、大腸がんなど他の部位のがんの肺への転移、肺結核、肺真菌症(カビで起こる病気)、肺非結核性抗酸菌症、狭い範囲の肺炎、良性腫瘍、古い炎症が治った痕跡などの可能性があります。しかし、血管と血管、血管と肋骨などが重なって、異常がないのに結節影があるように写ることもありますので、精密検査をした結果、特に異常がないということもあり得ます。
どんな症状があるのでしょうか?
結節だけでは症状がないことも少なくありませんので、症状がないからといって放置せず、必ず医師の診断を受けることが重要です。
精密検査はどのようにするのでしょうか?
検診などで肺に結節影があると指摘された場合、多くは精密検査のために指定の医療機関を受診するよう指示されます。検診の時期から日数が経っている場合は、もう一度胸部エックス線検査を行い、変化がないかどうかを確認する場合があります。また以前にも胸部エックス線検査を受けたことがある場合には、そのエックス線画像を取り寄せて比較することもあります。その結果必要と判断された場合、あるいは検診からの期間が短い場合には、CT検査などを行います。
CT検査で異常が確認された後はどうするのでしょうか?
- CT検査の結果、肺がん、肺結核などの重大な病気の可能性が高い場合はさらにより精密な検査が必要になります。次に行う検査には気管支鏡検査、PET/CT検査などが含まれます。手術を行って摘出する必要がある場合もあります。
- CT検査の結果、何も異常がないと判明し、安心できることもあります。また良性腫瘍、古い炎症の痕跡、肺の中のリンパ節など、治療が必要でないものと分かれば、やはりこれ以上の検査は必要なくなります。
- しかし、重大な病気であるとも、心配ないとも、いずれとも判然としないことも少なくありません。その場合は一定の期間をおいてCT検査を繰り返し、病気が無くなったり小さくなったりしないか、あるいは大きくならないか様子を見る(経過観察といいます)こともあります。
治療
病気が何であるか判明したら、必要に応じてそれに対する治療を行います。良性腫瘍、古い炎症の痕跡など、治療を必要としない場合も少なくありません。
生活上の注意
検診などで異常を指摘され、精密検査を受けても1回の診察で終わらなかった場合など、大きな不安を抱くことになります。不安のために安眠が妨げられたり、仕事に集中できなく、日常生活を楽しめなくなったりすることもあります。しかし重大な病気でないことも多いので、結果が出る前からあまり心配をしないようにしましょう。また治療が必要な病気であっても優れた治療法がありますので、まずは正確な診断を受けることに専念しましょう。一方、必要と言われた検査は必ず受けるようにしましょう。以前にも異常があると言われ、精密検査を受けたら心配ないと言われた経験のある方が、今度も異常があるといわれたが、きっと大丈夫だろうと精密検査を受けなかった結果、せっかく検診で早期発見された病気が手遅れになってしまった例もたくさんあります。精密検査や経過観察の方法に疑問があれば担当医に遠慮無く質問することはもちろん、セカンドオピニオンを求めることもできますので、大いに利用して下さい。