呼吸器の病気

I.その他

気管支拡張症

きかんしかくちょうしょう


 鼻や口と肺をつなぐ管を気管支といいます。気管支は気管から木の枝のように分岐して、肺の中に空気を運ぶ通路の役割をします。何らかの原因で、気管支が広がってしまった状態を気管支拡張といいます。気管支拡張に原因は、先天的な原因や幼小児期の肺炎、繰り返す感染などで、気管支壁が壊れたり弱くなることにより生じます。

 気管支が拡張するといくつかの問題が生じます。第一に気管支の壊れた部分に、細菌やカビが増殖して炎症をおこし、気管支の壊れによる気管支拡張がさらに進行します。増殖した細菌やカビはその他の肺の中にもひろがり、肺炎を起こして、肺の壊れがどんどん進行してしまいます。気管支拡張の部分には、炎症に伴って血管が増えるために喀血をきたすことがあります。気管支と肺の壊れが進行し次第に肺の機能が低下してゆきます。

 症状として多いのは、痰や咳、肺炎をおこしやすいなどの症状です。血痰や喀血もよくみられます。時に大量の喀血を起こすことがあります。X線写真やCTで気管支拡張があるかどうかを診断します(図1)。また感染が疑われる場合は病原菌を同定するために痰の培養検査が必要です。喀血が多い時は、血管が増えている状態を見るために血管造影(股の付け根の動脈から細い管を入れて気管支に行っている血管を造影する検査)を行うことがあります。

 症状の軽減や炎症を抑えるためにマクロライド系抗菌薬を投与したり、痰をスムーズに出す薬なども併用します。感染を起こしていることが疑われる場合には、適切な抗生物質を使って感染を抑えます。血痰や喀血に対しては止血剤などの投与を行いますが、大量の喀血や喀血が止まらない場合は、血管撮影を行って、カテーテル(血管にいれた管)からゼラチンなどを注入して血管をつめて出血を止めます。このような保存的な治療で症状が改善しない場合は、手術で拡張した気管支を含む肺を切除することもあります。

 気管支拡張のある方は、気道感染症により症状が悪化、また病気自体が進行しますので、風邪などにかからないように注意してください。また痰はためないようにしてください。予後は、気管支拡張の程度や範囲、感染の合併に程度などで異なります。

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