呼吸器の病気
D. 間質性肺疾患
サルコイドーシス
概要
肉芽腫と呼ばれる結節が全身に出現する原因不明の病気です。病気の起こる部位は人によってまちまちですが、胸部(肺門・縦隔)のリンパ節(図1)や肺、眼、皮膚に多くみられます。そのほか頻度は少ないですが心臓や筋肉、肝臓、神経、腎臓など全身のどの臓器にも病変が出現することがあります。
サルコイドーシスは厚生労働省の指定難病の1つであり、重症度III、IVの場合には医療費助成が受けられます。
図1:肺リンパ節の腫大、図2:肺から採取した組織中の肉芽腫
疫学
最近の臨床調査個人票を用いた疫学調査では、日本の新発見数(罹患率)は人口10万人あたり1.01人と報告されています。男性と比べて女性でやや発症しやすく、また20~30代と50~60代で発症しやすいといわれています。
発症のメカニズム
病気の原因は不明ですが、感染することはなく、また悪性の病気でもありません。家族内での発病がごく少数報告されていますが、一般的には遺伝しません。
症状
症状は臓器によって異なり、眼では霧視(霧がかかったようにぼんやり見える)、羞明(まぶしい)、飛蚊症(ちらちら視野に小さいものが移動する)などが出現します。皮膚では皮疹が、肺ではせき、呼吸困難などが出現することがありますが、約30~40%の患者さんは自覚症状に乏しく健康診断で発見されています。
診断
病変の組織を採取して、サルコイドーシスに特徴的な肉芽腫(図2)を証明することが最も重要ですが、胸部レントゲンやCT、ガリウムシンチなどの画像検査、血液検査、心電図検査、気管支内視鏡、などさまざまな検査を行い、また眼科や皮膚科、循環器科などでの診察も行い総合的に診断します。
治療
日本人ではサルコイドーシスが進行して生命にかかわることは極めてまれで、約6、7割の患者さんは自然に良くなります。眼や皮膚の症状に対してステロイド点眼や軟膏を使うことはありますが、多くの症例ではまず経過を観察します。肺や心臓、神経、腎臓、眼などの臓器で生命や生活の質(QOL)低下にかかわるような異常が生じた場合には、副腎皮質ステロイドの全身投与が必要になることもあります。
生活上の注意
症状がなくても1年に1~2回は定期検査を受けて下さい。また、動悸や息切れなどを自覚された際はお早めに医療機関を受診してください。
予後
病変の拡がりと発症の経過でさまざまです。先述のように患者さんの約7割は自然に軽快しますが約10%の患者さんはステロイドなどによる長期の治療が必要となります。日本ではこの病気で死亡する患者さんは非常に少ないですが、心臓や肺の病変の進行には注意が必要です。