災害時の対応について

1)閉塞性肺疾患に関するQ&A

Q1 COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎や肺気腫で治療中に吸入薬が無くなったあるいは災害で吸入薬が使用できなくなってしまった場合の対処方法とは?

A1.吸入薬には症状を良くするために毎日定期的に吸入するお薬(定期薬)と息苦しいときや症状が悪くなったときに吸入するお薬(頓服薬)の2種類がありますので、事前に確認しておきましょう。定期薬を毎日きちんと吸入することが大切ですが、お薬を数日休んでも急に症状が悪化することはありませんので安心してください。まずは、連絡あるいは受診が可能な医療機関を探してみてください。
もし息切れや呼吸時のゼーゼー/ヒューヒューといった症状がひどくなる場合は、頓服薬で対応するかまたはパニックにならないで、ゆっくりと落ち着いて、口をすぼめて息をはきだすように心がけてみてください(口すぼめ呼吸)。パニックになり、呼吸が荒くなると、さらに息切れがひどくなることがあります。
吸入薬がなくなった場合、「おくすり手帳」や「薬の現物」などの情報があれば臨時の処方が可能なことがあります。被災の状況では、「おくすり手帳」なども失ってしまう場合もあります。その場合も、あきらめずに、地域で開いている病院・診療所で病名をつげて相談してください。診療休止の病院・診療所でも対応してくれる場合もありますので、受付で確認してください。

Q2 COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎や肺気腫の症状が悪化したときに医療機関を受診する目安とは?

A2.いつもより息切れの程度がひどくなったり、夜や朝方の呼吸時のゼーゼー/ヒューヒューといった症状がひどくなる場合、痰の量が増えたり痰の色が黄色くなったり発熱がみられる場合は医療機関にご相談ください。息苦しくて横になれなかったり、動けなくなったり、会話が困難で短い言葉しか話せないときは、急いで受診する必要があります。
呼吸時のゼーゼー/ヒューヒューと鳴って、息苦しさがひどくなった場合、まずゆっくりと落ち着いて、口をすぼめて息をはきだすように心がけてみてください(口すぼめ呼吸)。もし頓服薬の吸入薬(気管支拡張薬)をお持ちであれば、その吸入薬を吸入してください。1回に1~2吸入、20分おきに約1時間まで繰り返しても副作用で困ることは少なく大丈夫です。次に、症状悪化時に際して医師の指示を受けている場合、症状が続くときや悪化するときには、医師から処方された副腎皮質ステロイド薬をお持ちの場合は内服してください。同様にさらに痰が黄色くなったときや発熱のあるときには抗生物質を内服してください。手持ちの薬がないときや症状がさらに悪化する場合には医療機関にご相談ください。

Q3 喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者さんが風邪やインフルエンザに罹患したときの注意点とは?

A3.高熱や息切れ、呼吸困難が進む場合は医療機関を受診してください。服用中の薬は医師に報告しましょう。普段のCOPDのための定期吸入薬は、自己判断で減らしたり止めたりしないことが大切です。医療機関を受診する時に必ず肺の病気であることを医師に相談してください。 避難所では、インフルエンザや新型コロナの可能性のある患者さんは、別室があれば移動したほうが良いでしょう。また、インフルエンザや新型コロナが疑われたら他の人にうつさないためにマスクをしましょう。避難所を巡回の医師がいればこれらの治療薬について相談してください。

Q4 COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎や肺気腫の患者は、災害後のほこり(粉塵)や煙を吸入したらどうなりますか。

A4.災害時には建物などの崩壊に伴い様々なほこり(粉塵)や煙が飛散します。ほこりにはカビや細菌(有機粉塵)あるいは有毒なアスベスト(石綿)、シリカ(ケイ酸)(無機粉塵)などが含まれています。これらの粉塵や煙をたくさん吸い込むと咳、痰や息苦しさなどの症状が悪化することがあります。また熱が出たり、肺炎になったりすることがあります。なるべく吸い込まないように、マスクや手ぬぐいなどで鼻と口を被いながら作業しましょう。アスベストは吸入した時には症状が無くても、何年も経ってから肺に障害や悪性腫瘍を発症することがあります。アスベストに限らず、ほこり、粉塵などの舞い上がる場所、薬品、カビなど異臭のする場所に立ち入る事は避けましょう。もしどうしてもアスベストの多量に飛散する可能性のある場所に立ち入る場合や、補修復旧作業に準じた作業を行う場合は、作業者に準じてマスク(作業用は目の細かい防じんマスクが推奨されています)や作業衣、ゴーグルなどの防護処置が必要です。瓦礫周辺のほこりっぽい場所を歩く場合も、舞い上がる粉塵やほこりは出来るだけ吸い込まないよう注意し、マスク等を着用しましょう。
災害時のアスベスト飛散防止に関して、平成19年環境省から「災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル」が発行されています( https://www.env.go.jp/air/asbestos/saigaiji_manual.html )。このマニュアルでは災害発生時から災害後1週間程度以降の解体撤去作業等に伴う規則、注意点等が述べられていますのでご参照ください。

Q5 COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎や肺気腫の患者は、ほこりや煙を吸入しないように、あるいは息切れがするので、まったく動かず、安静にしていた方が良いのでしょうか。

A5.COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎や肺気腫をお持ちの方は、病気をお持ちでない方と比べて、普段から運動や作業をしていないとされています。定期的な運動や作業をしていないと筋力が低下し(サルコペニアと呼びます)、虚弱な体質(フレイル状態と呼びます)になりがちになります。また動かないで、同じ姿勢で長時間過ごしていますと、血液がどろどろになって、血栓症や塞栓症を発症することもあります。急な息切れや胸の痛みのときには医療機関にご相談ください。 家の中では、横になって寝ているよりは、座っていた方が良いですし、座っているよりは立って作業するように努めてください。また適度な外出や散歩も必要です。ただし外出するときには、なるべくほこりや煙が多い場所を避けて、マスクをして外出することをお勧めします。ただし在宅酸素療法を受けている方は、酸素の残量のことを考慮して、酸素の供給量が確保できるまでは、不必要な外出は控えた方が良いと考えます。

Q6 在宅酸素療法中あるいは在宅人工呼吸療法中に停電になった場合の対処方法とは?

A6.まず在宅医療機器の処方を受けている医療機関とその在宅医療機器を取り扱っているメーカーとそれぞれの連絡先を確認してください。災害時に医療機関やメーカーからで各患者さんへの確認の連絡があるかもしれませんが、自らも確認の連絡をしてみてください。人工呼吸器にはバッテリーが内蔵されている機種もありますので、事前にどれくらいの時間までバッテリーが耐えられるかを確認しておきましょう。
それまではまず予備(携帯用)酸素ボンベで対応してください。したがいまして予備の酸素ボンベの在庫と酸素ボンベの残量を確認しておくことが必要です。しばらくは不要不急の外出は控え、自宅にあるボンベを大切に使っていきましょう。24時間高流量で酸素を使用しているあるいは人工呼吸器を使用している患者さんは、酸素ボンベのみでは対応が困難になる可能性が高いので医療機関に相談して下さい。
やむを得ず酸素吸入が出来なくなった場合には急いで医療機関を受診するのが原則ですが、慌てることは禁物です。身体を動かすことによって酸素欠乏は増悪するので、息切れが強くないときにはできるだけ安静を保ってそのまま待機することもよいでしょう。 自宅から避難する場合は、かかりつけ医療機関や担当営業所に避難先を連絡しておきましょう。各メーカーのホームページに連絡先等が掲載されています。
主なメーカーと連絡先を記載します。