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ATS 2024 参加報告書

慶應義塾大学医学部呼吸器内科
田中 拓

1) 今回ATSに参加した理由

 ATSは胸部疾患・呼吸器疾患領域における世界最大の学術発表の場であり、基礎研究および臨床研究の見地を国際的に広く共有し、同領域の学術的発展を担うことを目的とした学会である。今回ATSに参加した目的として、私の基礎研究テーマである、肺炎球菌性肺炎における上皮細胞の自然免疫における役割の解明に関して、口頭発表を行って多くの研究者の意見を集め論文化に役立たせることを最大の目的とした。また、呼吸器感染症分野で活躍する海外の研究者と交流を深め、基礎・臨床領域の知見を共有し、自身が応用できる研究手法を探索することも目的とした。

2) 発表したセッションの感想

 私が発表したミニシンポジウム "What is new in pneumonia?"では、肺炎全般に関する臨床研究・基礎研究の結果が、世界中から広く発表されていた。テーマが広く設定されていたため、ウイルス・細菌といった病原体の研究から、レジストリを組んでの臨床研究、さらに宿主因子に注目した内容まで様々であった。座長のSamantha Yeligar博士(Emory Univ.)、Nathan C. Dean医師(Univ. of Utah)をはじめフロアから多くの質疑応答が集まっており、私の発表に対しても研究内容の論文化を助けてもらえるような専門家のアドバイスを収集することができた。また本助成内容とは異なる研究成果であるが、共同演者として発表した研究成果についてもposter discussionにおいて感染症領域の専門家から多く質疑を頂くことができ、本研究内容の次なるステップにつながる知見を集積できた。

3) 参加・聴講したプログラムの感想

 私が研究テーマとしている呼吸器感染症、主に非結核性抗酸菌症の領域について、ポスター発表や口頭発表を聴講してきた。本領域についてガイドライン作成にも携わっている米国やアジアの研究者らの臨床研究・基礎研究内容を広く学べたほか、ERSで気管支拡張症のレジストリー研究を広く行っているJames Chalmers(Univ. of Dundee)のexpert opinionなどにも触れることができ、私自身の研究領域における発展性を実感し、現在おこなっている研究計画の発展や新しい研究テーマの想起につながった。

4) カンファレンス以外での体験

 学会においては発表以外にも、私が研究領域としている呼吸器感染症や炎症性疾患のテーマに関して、米国をはじめとした世界中の研究者の発表を聞き、研究についての議論を重ねることができた。Harvard UniversityのBruce D. Levy医師および同研究室メンバーらとの研究交流をおこなったほか、韓国のYonsei大学において肺非結核性抗酸菌症の臨床・基礎研究を率いているJoong-Yub Kim先生らとの研究交流、さらに日本から集まった呼吸器内科の先生方らと広く研究討議などを行うことができ、貴重な機会となった。

5) 今後参加する若手医師へのメッセージ

 私たちは日本の研究者として、海外の研究者と国際的な知見を直接共有すること、また自身が携わった研究成果を発信することは、極めて重要な任務であると思います。ATSは呼吸器領域に関連した世界最大の国際学会であり、基礎研究およびtranslational researchが多く発表され、国際的知見を生み出し広く共有できる場です。研究者として自身と自身の研究を発展させるためにも、多くの先生方が挑戦できる場となることを願っております。