活動・取り組み

日本呼吸器学会 海外学会参加助成 被助成者一覧

ATS 2024 参加報告書

京都大学iPS細胞研究所 臨床応用部門
大西 裕子

 この度、日本呼吸器学会より助成金を賜り、ATS2024 International Conferenceにおいて基礎研究の内容をポスター発表させていただきました。ATS International Conferenceは世界中の呼吸器領域の医師や研究者が集まる学会ですので、世界的な基準で見られたときに自分の行っている研究がどう評価されるのかを実感として得たく、また他の参加者とのディスカッションや研究のトレンドから、自身の研究を今後どのように発展させていくかのアイデアを得たいと思い参加しました。実際に参加してみると発表の内容は同じ研究領域の著名な研究者の方々からも好意的に受け取っていただけていると感じ、全体として手ごたえを感じることができました。国内学会参加と比較すると、アグレッシブにディスカッションをしてくださる方が多いためか、そのような参加者からの反応は感じ取りやすいように思いました。
 ATS International Conferenceは基礎研究の演題も非常に多く、オミクス解析に焦点を当てたシンポジウムや疾患モデルマウスを活用した肺傷害再生研究に関する演題を聴講しました。数年前と比べるとオミクス解析の手法が発展したこともあり、恒常的あるいは組織傷害時に存在する細胞のサブタイプと各種細胞間での相互作用の推測がより進み、傷害修復nicheの理解が深まっていると感じます。また、小さい会場で、参加者が与えられたテーマについて会場中央のマイクで自由にディスカッションをする、討論会のようなセッションもありました。国内学会ではあまり見ない形式だったので大変刺激的でした。基礎研究領域以外では、臨床試験に関連する講演を聴講しました。多くの講演が、各治験薬の成功と失敗から得られる原因と教訓に焦点を当てて行われました。特に特発性肺線維症の最新の臨床試験の結果が報告された演題は、質問や会場の雰囲気から注目度の高さがうかがえました。第3相臨床試験まで進んだ二つの治験薬に関してはどちらも失敗の結果が報告され、現在の肺線維症の臨床試験におけるエンドポイントの設定やリクルートする患者の基準に課題を感じました。
 ATS International Conferenceは、最前線の研究に触れることができ大変刺激的で、知識も経験も得るものが多い学会だと思います。今後参加される方にとっても、研究やキャリアを大きく進める良い機会になると思いますので、是非来年度以降もこのような国際学会参加助成制度が続くと素晴らしいと感じました。
本学会への参加は大変有意義なものになりました。改めまして、この度は選考していただき誠にありがとうございました。本学会での学びを今後の研究活動に活かしていきたいと思います。