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ATS 2024 参加報告書

名古屋市立大学大学院医学研究科
三浦 陽子

1) 今回ATSに参加した理由

 ATSへの参加は今回が2回目です。前回の参加では、私たちが構築した特発性肺線維症に類似した症状を示す動物モデルに非常に興味を持つ研究者が多く見られました。そのため、今回はこの動物モデルと近年注目されているPrecision-Cut Lung Slices (PCLS) という技術を組み合わせた薬剤性肺障害に関する研究を発表しました。また、今回は共同研究先のオーストラリアのグループも参加すると伺ったため、研究者同士のコミュニティをどのように維持し、次へ発展させているかを学びたいと考え、参加しました。

2) 発表したセッションの感想

 本学会では、Thematic Poster Sessionで" Bleomycin Induces Senescence and Cell Death in Novel Induced-Usual Interstitial Pneumonia (iUIP) Mouse Precision-Cut Lung Slices"に関する発表をいたしました。本セッションでは肺組織培養の技術としてPCLSだけでなくオルガノイド等を用いた発表が数多くありました。PCLSを用いた試験は日本では稀で情報交換が難しい印象があります。今回の参加で他の研究者が行っている培養の方法やそのコツに加え、当方の実験条件をディスカッションでき、実験方法の改善や新たな方法の構築につながったと考えています

3) 参加・聴講したプログラムの感想

 今回、Mentoring Programに参加し、Mentorとしてサンディエゴ大学Xin Sun先生とお話しする機会を得ました。このプログラムでは、こちらの希望にマッチングした先生を紹介していただき、研究だけでなくキャリアにつなげるための機会を得ることを目的としています。Xin先生は肺機能維持に関する細胞同士の関係性と病態メカニズムの解明に関する検討をされており、私たちの着目している肺線維症における上皮細胞の異常性に関し非常に興味を持って話を聞いてくださいました。今回、約1時間お話しすることができ、非常に有意義な機会を得ました。他のプログラム参加者も1時間ほどは時間を取ってお話しされていた印象があります。

4) その他Conference以外での体験

 ATS2024に先立って、CanadaのWinnipegで開催されたYoung Investigator Meeting 2024へも参加させていただきました。どちらの会議も夕方にセッションが終わることが多く、参加者同士が1日の終了後に食事などを共にしながら交流を深めるだけでなく、共同研究の進め方や研究資金の獲得方法について相談している様子が非常に印象的でした。今回のATSでは、Monash大学のJane Bourke先生をはじめ、先生のお知り合いの研究者と共に過ごす機会がありました。1日のセッション終了後には、一人では決して入ることのないレストラン等をご一緒させていただくこともできました。彼らの会話テンポは非常に早く、内容を理解したころには別の話題に移っていることが多かったため、会話についていくのは大変でした。しかし、この会話の中で、どのようにしてお互いに利益のある研究につなげるか、共に研究資金を得られるかを検討している様子を拝見しました。日本ではあまり見られないコミュニティの存在と、それをどのように維持し、次へつなげているのかを学ぶことができ、大変勉強になりました。

5) 今後参加する若手医師へのメッセージ

 ATSはセッション数が非常に多く、実際に会い、話ができる研究者は僅かです。多くの先生方は、どのセッションに参加するかを細かく予定を立てており、話をする時間は限られていました。1~3分以内で自分の研究を紹介し、興味を引き付けられるように準備しておくことをお勧めします。

ATS2024