活動・取り組み

日本呼吸器学会 海外学会参加助成 被助成者一覧

ATS 2024 参加報告書

神奈川県立循環器呼吸器病センター
藤本 一志

 神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科の藤本一志と申します.
 この度,日本呼吸器学会よりATS2024 International Conferenceの参加被助成者として選定していただきましたこと,大変光栄に存じます.
 今回ATSに参加した理由としては,海外学会での発表経験を得て,最先端の研究結果の報告に触れることで今後の日常臨床や研究のモチベーションを上げるとともに,呼吸器内科医として新たな視点を得ることが目的でした.私自身,千葉大学医学部の学生時代に幸運にもWashington DCでのATS2017 International Conferenceでのポスター発表の機会があり,今回は7年ぶりのATS参加となりました.呼吸器内科専門医研修中の身ではありますが,言うまでもなく貴重な経験となりましたので,今後参加を検討される先生方への参考となればと思い,報告させていただきます.
 今回私はThematic Poster Sessionでの発表でした.国内のポスター発表と同様に,会場となったSan Diego Convention Centerの広いポスター発表会場に自身のポスターを掲示し,訪れた質問者に適宜回答するという形式でした.11時30分から13時15分までのセッションでありましたが,ファシリテーターの先生とグループ内のポスター発表者が一つのグループとして順番にラウンドしつつ交代で発表する国内のポスター発表と同様の形式で発表を行なっているグループもあれば,ファシリテーターの先生が参加者の先生に混じって適宜質問に来る形式のグループもありました.私の発表グループは後者の形式でした.私の発表は特発性肺線維症患者の肺高血圧症推定におけるDeep Learningを利用した胸部CT解析の有用性に関する研究であり,時間内に6-7人の先生が質問に来てくださり,それぞれの先生とディスカッションを行いました.英語でのコミュニケーションの機会を得る体験自体も貴重でしたが,ディスカッションを通じて今後の論文化に向けた建設的なコメントを多く頂いたことが今回の発表を通じて得た最大の利点だと考えております.国内学会との違いとしては,北米のみならず中南米,ヨーロッパ,アジアからの参加者も多いため,国ごとに使用できる医療機器,適応になっている検査・治療の種類なども異なり,日本で使用可能な検査・治療などの説明を要したことが挙げられます.
 今回,自身の発表や一般の講演の聴講以外にも,頂いた助成をもとにILDのPostgraduate courseにも参加させていただきました.ILD関連のガイドラインの解説など基本的な部分から,米国での移植施設への紹介のタイミングやILD患者の外来フォローのタイミング,治療の考え方,最後はTough caseを通じたディスカッションなど,朝8時から夕方16時までの長丁場のセミナーでしたが,体系的な知識の習得とCaseへの応用を通じて大変勉強になりました.
 Conference参加以外では,本場のステーキやハンバーガー,チーズケーキや現地のビールなど,食生活が充実していたのはもちろんですが,ラ・ホヤやUSSミッドウェイ博物館,コロナドなどサンディエゴ近郊への観光も会期中の合間に行うことができ,大変充実した1週間を送ることができました.
 ATSでは日本にまだ入ってきていない最新の知見やロボット気管支鏡などのデバイスを直接体験することもでき,今後の臨床・研究に役立つような刺激を受けました.また,普段国内ではお会いできない海外の先生方や,初めて知り合うことのできた国内の先生方との出会いもありました.今回,ポスター会場でILDの大家であるVincent Cottin先生と議論を交わす機会がありましたが,自身の英語力や疾患に対する理解度が未熟であったために思うように意見を伝えることができず,悔しさを痛感しました.しかしながら,より一層の努力を重ねる必要があることを実感させられた,今後の糧になる貴重な経験でした.ATSなどの海外学会にこれまで参加されたことのない先生方は,是非一度行っていただくことで新しい視点が拓けると思います.今回の私の経験が今後参加を検討される先生方の参考に少しでもなれば幸いです.
 最後に,この度は日本呼吸器学会から素晴らしい機会を与えていただき,事務局など関連各所のスタッフの方,先生方へ心より御礼申し上げます.また,出張中に院内業務をサポート頂きATSへ暖かく送り出して下さった神奈川循呼の呼吸器内科の先生方に深く感謝申し上げます.

ATS2024