活動・取り組み
日本呼吸器学会 海外学会参加助成 被助成者一覧
APSR 2024 参加報告書
順天堂大学 呼吸器内科学講座
永田 祐一
■ 今回APSRに参加した理由
2024年11月に香港で開催されたAPSR 2024(Asian Pacific Society of Respirology)に参加した。これまでにAPSR 2023 Singapore、APSR 2022 Korea、APSR 2021 Kyoto(オンライン)に参加および発表を行っており、今回も継続してこの国際学会に参加した。
■ 感想
・よかったこと
2021年から2024年にかけての変遷を振り返ると、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が収束しつつあることを実感した。今年の会場では、多くの参加者がマスクを着用せず自由に意見交換を行っており、参加者数も顕著に増加していた。特に2022年のKorea大会が閑散としていたことを思い出すと、その差は明確であった。 本学会では、Pulmonary Circulationのポスターセッションにて演題発表を行い、さらにAssembly MeetingにおいてEducation Awardを受賞した。ポスターセッションでは、香港、フィリピン、日本の研究者と議論を交わし、研究内容をさらに深めることができた。私の演題はPulmonary Artery Hypertensionに関するものであったが、アジア地域ではこの疾患に関する診療がまだ盛んではない印象を受けた。過去数年間のPulmonary Circulationセッションでは、血栓症をテーマとしたものが大多数を占めており、Pulmonary Hypertensionに特化した発表は少なかった。しかし、希少性ゆえに聴講者の関心は高く、多くの質問や意見を得ることができた。同セッションに参加した医師とは、来年のATSでの再会を約束した。
・国内学会との違い
最大の違いは、当然ながら英語でのコミュニケーションが必須である点である。アジア諸国の参加者は英語運用能力が非常に高く、議論において柔軟な対応が求められた。一方で、意思疎通が成功した際には大きな達成感を得ることができた。また、Case Reportのような小規模な報告でも、深い議論が展開される点が特徴的であった。ポスターの前には複数の国や施設からの参加者が集まり、フランクな雰囲気で活発な意見交換が行われていた。特に、プレゼンターが片手にコーヒーカップ、もう片手にソーサーを持ちながら軽やかにプレゼンするスタイルは印象的であった。
■ そのほかの体験
企業展示では、当然ながら国内学会とは出展企業や展示内容が大きく異なっていた。見慣れない医療機器やシミュレーション技術を直接体験する機会は非常に貴重であり、有意義であった。
■ 若手医師へのメッセージ
APSRは、多くの参加者にとって英語が第二言語であることもあり、互いに理解し合おうとする努力が随所で見られる。経験豊富な先輩医師の言葉を借りれば、ATSやERSと比較すると求められる英語スキルのレベルはやや穏やかであり、国際学会への登竜門として適切と言える。若手医師にもぜひ参加を検討してほしい。
来年はATS(American Thoracic Society)への参加を予定しており、APSR 2025にも機会があれば参加したいと考えている。引き続き国際的な交流を深め、世界に向けた情報発信を行いながら、さらなる研鑽を積む所存である。